Alice In Wonderland
- Es99 Official web page -

修理日報

続続続:空燃比フィードバックモニターの怪


突然であるが,プレッシャーレギュレーターを疑ってとりあえず落ち着いていた
空燃比フィードバックモニター問題が,スロットルボディーのO/Hを行った事で
新たな展開を見せたので報告する

空燃比フィードバックモニターの事はとりあえず頭の片隅にしまいつつ,
昔からやりたかったスロットルボディーのO/Hを敢行した後
その事件は起った.
O/Hを完了し,試運転をした後に確認のために計ってみた
空燃比モニター信号が何と2.3Vになっているのである.
要するに,リッチバーンでもリーンバーンでもない.理想の燃調である.

そもそも今回行ったO/Hはスロットルボディーの清掃であり,
これを行っても燃料が少なくなる事はありえない.
更に空気流入量はエアフロメーターで測定しているので
下流のスロットルボディーがどうなろうと,測定値は純粋に
空気流入量を示しているはずである.

では,変化した点は何か...
というと,各汽筒のバランスくらいである.

実は以前から若干疑問であった点がある.
各汽筒間のバランスが大きくずれていた場合,果たして空燃比フィードバックに対して
どういう悪影響を与えるか...

ここで空燃比制御をおさらいすると
まず,空気流入量を測定する
それと回転数から,1汽筒あたりの空気の量を計算し,それに見合ったガソリン噴射量を決定し
インジェクターで噴射を行う,
結果,O2センサーからの出力がリーン(電圧が低)であればガソリン噴射増量補正を行い
O2センサーからの出力がリッチ(電圧が高)であればガソリン噴射減量補正を行う.
この結果によって空燃比モニター端子の電圧を変化させ,リッチ制御よりかリーン制御よりかを
知らせているのである.

ここで一つ気になる所がある.
O2センサーの出力についてである.
一般的に使用されているジルコニア型O2センサーの動作原理は,センサー内部に導入されている
大気(当然O2をたくさん含む)と,センサー外部に当たる排気ガス(O2はそれほど含まない)の
O2の濃度差が大きいほど電圧を発生し,O2の濃度差が無い時には電圧を発生しない.となる.

つまりリーンバーン(希薄燃焼)では燃料が少な目で燃焼後の排気ガスには酸素が多く含まれるので
O2センサーの出力電圧は小さくなる.
逆にリッチバーンは排気ガス中に燃え残った酸素が少ないので濃度差が大きくなり電圧が発生する.

しかし,実際にジルコニアセンサーを単体で使用した場合,濃度差に対して比較的リニアーな
起電力しか発生せず,さらに理想空燃比である14.7においても酸素は完全には無くならず,
この理想空燃比付近を検出するのは困難である.
そこでO2センサーは触媒として白金を使う事により,14.7付近を境に大きく起電力が変化する
特性を持たせている.
ここで問題になるのが,この白金の作用である.
実は白金は単純に14.7付近での感度を上げているわけではない.
(というかそんなこと出来る素材はまずないだろう)
実際には白金による触媒作用により,リッチバーンの時に発生するHCとO2を反応させて
O2センサー近傍の排気ガス中のO2を消滅させ,結果的に大きな起電力を発生させているのである.
ちなみにリーンバーンの時には少量のCO2と多量のO2が排気ガス中に含まれるが
このときにはO2の濃度差が少ないので,起電力は発生しない.

さて,話を本題に戻そう.
以前私はインテーク側の空気の総量が同じであれば,
汽筒間のバランスが悪くても,リッチバーン汽筒では酸素を使い果たし,
リーンバーン汽筒では酸素をたくさん排気ガス中に放出する事により,
O2センサーはリーンバーンと検出してしまうと考えていた.
つまり,私のエンジンのリーン制御寄り(つまりエンジン的にはリッチバーン)と
汽筒間バランスは関係ないだろうと考えていたのである.

しかしである,白金触媒に対して大きく影響を及ぼすHCの発生は
グラフを見る限り,少しでもリッチバーンにずれれば一気に増大し,
14.7の理想空燃比を境に,その量はぱたりと無くなる.
対してNOxやCO2の変化量はさほど急ではない.おそらくO2もそうだろう.
つまり,1汽筒でもリッチバーンの汽筒があると,
他の汽筒がリーンバーンであって多少の酸素を放出しているにもかかわらず
そのO2を触媒により軽く打ち消してしまうだけのHCを発生しているのでは
無かろうかと...

もしこの仮説が成り立つのであれば,汽筒間バランスのずれにより
O2センサー近傍のO2が"空気の総量"対"総噴射燃料"のバランスが
理想値であってもリッチ燃焼と検出され,
結果としてリッチ汽筒が主導権を握るような制御が行われ,
エンジンコンピューターの予想よりもリーン制御に
制御が振られるのではなかろうか...

とりあえずまだアイドルバランス調整が完成していないので正確な事は言えないが
更にアイドルバランス調整を追い込んで,もっと空燃比制御が理想値に近づくかどうか
確かめてみる予定である.


修理日報インデックスページへ